オリバーピープルスのジオ・ポンティを発見する場所
「外観からインテリアまで、パルコデイプリンチピ・ホテルはジオ・ポンティ自身の素晴らしい作品そのものであり、オリバーピープルス・ジオ・ポンティ・コラボレーション・キャンペーンを撮影するのに理想的な場所です。」
G.Ponti-1、 Blue Tortoise + Soft Gold、ジオ・ポンティがデザインしたパルコデイプリンチピ・ホテルのタイルの色調に溶け込んでいる。
ジオ・ポンティは、この喜ばしい依頼をナポリの不動産富豪で起業家のロベルト・フェルナンデスより1960年代初頭に受け、それはやがて劇的な変化をもたらす時代の幕開けとなりました。クライアントはポンティをナポリに近い歴史的な場所に連れていきました。ここは地元貴族の18世紀のヴィラが突き出た崖上に散在する場所でした。 優雅で新奇な建築物の中には、ロマノフ王朝貴族の親族が自ら買った土地に建ようとした、後に未完成の19世紀の「中世の英国風の城の再現」と呼ばれたものがありました。殆ど廃墟となったこの建物の址に新しく豪華なホテルが建てられることになったのです。「私がこの地に連れて来られた日は陽が差すもやの中で何もかもがブルーに見えた。ブルーの空、ブルーの海、カプリ島、イスキア島、プロチダ島(ブルー・アイランド)、ポジロポ(ブルーの半島)ヴェスヴィオ山(ブルーの火山)が地平線に浮かぶブルーのアウトライン…建物の外側はブルーと白に、内側は白とブルーにしよう」
ホテルの建物はメガネのデザインのインスピレーションとなったジオ・ポンティ・スタイルのシグネチャー・アングルが特徴。
どの角度から見てもインパクトの大きいG.Ponti-2のディテールがみえる。
このコンセプトは即座におびただしい数の絵やスケッチ、そしてメモ書きとなりました。ポンティは極限まで探究するための空間と予算を拡大させようと決心しました。彼は「建築家は人々の休暇のために魔法のヴィラを、人々の旅のために魅惑のホテルをデザインしなければならない」と書いています。最終的に彼はプロジェクトに求められた以上のものを創り上げました。このホテルが現在もポンティの人道主義的な考えと途轍もない要素の多様性を持ち合わせ、完全な形のまま建ち続けていることは驚くべきことです。 オリバーピープルスが新しいジオ・ポンティ・コレクションを発表するのにこれ以上理想的な場所はありません。この選択肢は大胆であり、また暗示的であるとも言えます。ジオ・ポンティがこの素晴らしい場所に何かを感じたようにオリバーピープルスも同じインスピレーションとインパクトを‐特にこのキャンペーンとジオ・ポンティ・アーカイブスとSeries IIコレクションとの特別なコラボレーションのためにホテルを訪問した際に感じたのです。このホテルは現代のケーススタディ、つまり-ポンティの作品すべての具現化であり-このキャンペーンの背景としてパルコデイプリンチピ・ホテルが必須であったことに疑いの余地はありません。
日陰でも鮮やかなG.Ponti-3 Brushed Brass + Burgundyの色合いは際立つ。
ホテルの敷地内とコラボレーションの色調にはブルーが頻繁に使われている。
「ソレントのホテルをデザインした時、そんな必要はなかったのだが100室すべての床が異なるようにしたかった。私のセラミック愛のなせる業だ。私は依頼された以上のことを成し遂げるよう頑張ってしまう。結局、30種類のデザインに2,3,或いは4つの組み合わせで100種類の床を造ることができた。」 こうして、各部屋に特有のテーマや物語ができた。備え付けの家具や付属品はほぼ同じであっても、“星の部屋”、“月の部屋”、“ダイヤモンドの部屋”あるいは“楕円、葉っぱ、クローバー、などといった具合に。」
彼の作品は多面的なビジュアルインパクトで驚きと喜びを呼び起こす点で卓越しています。無数の白く光沢あるセラミックの小石に覆われた建物の表面を引き立てる鮮やかな陽の光は、彼の建築の特徴を描写し、表現するための必要条件です。
パルコデイプリンチピ・ホテルの客室において、ポンティは彼が製作したすべての家具の類型の再解釈を手掛けて絶賛されピークに達します。ここでの彼のデザインはさっと一掃するような気楽な線で描かれ、最も良い例として、形はブルーと白の2色の薄版で区切られていました。また、この特有の寝室用家具のデザインに彼は建築とデザインの両方の分野で懸命に獲得した定形のコンセプトを応用し、 これが視覚的解釈を説得力ある結晶のゲシュタルト(形態)へ向かわせることになります。これらはすべて屋内の空間を非物質化する実験であり、先ずは意図的にあからさまな構造的ディスプレイを避ける家具のイノベーション(ヘッドボードに統合された棚や隠れた光源があるキャビネット等)を試みました。これらの形態はデンバーのアートミュージアムやタラント大聖堂などで1970年代まで彼の建築物に再現されました。
特徴的なシャープなブリッジでG.Ponti-3はアングルと丸みを兼ね備えるデザインに完璧なバランスを見出している。
フレームのディテールはBrushed Brass + Burgundyの色調の明白なコントラストでハイライトされる。
パルコ・プロジェクトの全体的な構造とその空間の特性は建築家の考え方と技法を実証するものでもあります。ポンティは人々が安ぎ、また驚嘆する場所を造るため、空間と構造を迷路のように入り組んだ方法で扱いながら彼の生まれながらの感性を抽出していったのです。 ロビーでは、抽象的な構成の中で様々なフォルムが衝突し、物資的な覆いを超えて付属の庭の生い茂る緑の中に部屋が移動するかにみえます。この効果を補強するため、ファウスト・メロッティが六角形の仕切りと外壁にはめ込むセラミック・パネルのデザインを任されました。絵画のようなこれらの要素がロビーやレストランの公の空間をまるごと優しく包み込み、疲れた旅人やカジュアルな利用者を癒してくれるのです。
一方でポンティは、夢を実現するの当事者についても熟考していました:「建築はある一定の条件の下にある芸術であり、クライアントもただ消極的に受け入れるだけでなく、それを理解する努力をすれば作者の一人となる。」この言葉は60年代のダイナミックな文化的環境の中で生まれた芸術を後援する機運を反映するものかもしれませんが、オリバーピープルスは今、このキャンペーンをかつての啓蒙の時代への架け橋にしようとしています。 「私にとって“過去”というものは存在しない。なぜなら私は我々の文化の全ては同時進行していると考えているからだ。また私は過去と現代の建築の間で技術的な“分断”があるとは思っていない…技術も新しい素材も不変かつ唯一の判断の条件を変えることはできないし、むしろそれらは継続させていくためのものである。どんなに機能が新しく異なっていても、どんなに表現が新しく異なっていても、芸術的な評価は変わることはない;それは、不変の原則に基づいているか?で決まる。
オリバーピープルスのクラシック・クリップオン・アクセサリーがジオ・ポンティのシャープなラインの美しさで生まれ変わる-上記G.Ponti-1を参照
G.Ponti-1のTortoise Polished BrassとG-15クリップ
「芸術作品の評価は常に一つしかない:それが美しいか否か?芸術であるか否か?私たちを魅了するか否か?」
常に創造の方向性を汎イタリア文化の概念に向け、イタリア式の家について絶対確実な探究をすることでポンティは家のインテリアを単に住むための機械とする考え方を意識的かつ徹底的に否定しました。20世紀半ばの建築の議論に同調し、新たな人間中心主義の条件を提示したポンティは、建築家がクライエントを観客と見做し、空間を使った創案が終わりのないディベルティメントのように演出されたルネッサンス時代へとその視点を確信をもって向けたのです。 大胆なウィットがハーモニーに包まれた時に生まれる意外性のポエティックスや斬新な倍音への彼の新たな興味が感じられます。これらすべてはポンティが遊び心を好んだことを物語っており、それはオリバーピープルズのキャンペーンと商品も全く同じです。
クリップなしでもG.Ponti-2は明らかに特徴的。面白い事実:上記の椅子はジオ・ポンティがホテルのために選んだ家具の中で彼自身のデザインではない数少ないアイテムの一つ。この肘椅子はノルウェーのArnestad BruckのデザイナーRolf Rastad & Adolf Rellingによってデザインされた。その権利は1961年にCassina社によって取得され“Poltrona 829.”モデルと呼ばれている。
このホテルは、天井から床までポンティの世界観を体感し、その空気感を味わえる素晴らしい機会を与えてくれる場所です。ここはオリバーピープルズのデザイン・チームが衝撃的なインスピレーションを得た場所です。頻繁に使われるブルーと磨かれた真ちゅうのディテールや 建物全体を支配する角ばったラインなど、ディテールの一つ一つが典型的なポンティであり、またこれらのディテールは新しいオリバーピープルズ・ジオ・ポンティ・コラボレーションの全ての要素につかわれているのです。
文: ブライアン・キッシュ
動画と写真: リッチ・ステイプルトン